「円弱」という言葉を初めて聞いた。言い得て妙、と感心するものの、何ともうら寂しさを禁じ得ない。

先日一時1$=160円台に突入、かつて79円台を経験している立場からすると、実に日本の価値が半分以下になったのだと実感させられた。

製造業に携わった者の立場で言うと、「円弱」の歴史はそのまま日本の製造業の弱体化の歴史と重なる。日本の円高が進行したのは、ニクソンショックとプラザ合意以降の数年、そして東北大震災後。15%を越える円安になったのは、バブル崩壊の1996年、2013年、そして2022年。そして2年間下落が続き、160円は1986年と同レベル。この38年の努力が吹き飛んだともいえる。

もちろん、対米ドルでの名目為替がすべてではない。しかしこの背景には、日本が国際競争を繰り返す中で、製造業の質的向上に力を注がず、小手先の人件費圧迫のために社員を外注化し、社員教育をおろそかにしてきたこと、設備装備率を下げ、労働集約型の生産でよしとしてきたことのつけだともいえる。円弱の正体は、日本の製造業の弱さにある。

シャープの液晶TV工場の閉鎖が発表された。その一方幾つかの企業が、国内回帰を進めている。しかし国内回帰の理由が安い人件費では、円弱は止まらない。強い日本の復活のために、私たちはどのように役に立てるのか、改めて問う必要があることを「円弱」という言葉に実感させられた。

 関西支部では、来週5/30(木)、工場見学会を実施します。
 リサイクルプラントで日本有数の企業、富士車輛様を訪問させていただきます。資源の少ない日本にとって、リサイクルは新たな資源(にすべき)であり、今後その技術をいかに磨いていくかは、日本の将来にも大きくかかわってくると思います。ぜひ関心をもっていただき、見学にご参加ください。

メールマガジンの続きは、添付にてご確認ください。