「繊維産業研究会」は、今年の3月に新規で開始した本部所管の研究部会で、全国の支部との合同研究会です。関西・中四国・九州支部から6名のメンバーが集まり、2か月に1度のペースで会を実施しています。遠隔地メンバーとの実施のため、会議はオンラインで行っています。

アパレルを初めとし、繊維産業は衣食住の一角を担う、生活になくてはならない商品を提供し、さらに購入の目的が自分らしさを映し出す自己表現伴っていることから、ファッション性が求められるため、単なる需要と供給でこの産業を見ることはできません。日常的にデザインを変更し、需要を喚起するイノベーションを繰り返し行わなければならない産業だと言えます。

出典: 経産省「2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)」よりhttps://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/textile_industry/pdf/20220518_1.pdf

しかし日本の繊維産業は長期的に縮小傾向にあり、ピーク時の1990年代以降半減しています。これには軽工業の海外移転という産業構造の変化や、複雑な多段階構造により成り立っているという構造的な問題が大きく影響しています。産地を形成しており、それぞれの特長を形成できている半面、他と交わらない分散性が業界成長の妨げになっています。また原糸や生地の生産、染色整理、縫製等の各段階がそれぞれ分業かつ下請け構造になっており、価格の押上げにつながる一方、雇用者の報酬が低く、担い手が減少してきています。さらに、衣類に関わるアパレル産業には大量廃棄といった環境問題も抱えているなど、構造不況のみならず、社会課題とも向き合わないといけません。

出典:同上

このような機会と脅威の両側面を強く持つ業界のため、苦境を迎えた企業と、これを機会ととらえ、成長にむけてチャレンジをする企業とに二分しています。これらの産業的問題と個別企業の成功要因を明らかにし、今後の日本の繊維産業が進むべき方向について研究を深めていこうとしているのが本研究会での目的です。

設立にあたり、参加メンバーとどのような目的で行うかなど、喧々諤々の議論をしました。対象をアパレルにするか、上流まで含めて対象とするか。成果物や結節点を設定するか、まずは学会発表の内容を深めるかなどなど。まだまだ始めたばかりで、これから研究を深めると同時に、会の運営も作っていっている段階です。

現在のところ大学の教員による研究中心ですが、実務家の方をはじめ、関心のある方はぜひお声がけください。

  研究会主査 :大阪学院大学 葛西
                    e-mail :  eriko.kasai@ogu.ac.jp
(文責:葛西恵里子)