日本生産管理学会関西支部の船越です。現在、東京大学生産技術研究所豊田啓介研究室で、コモングラウンドについての共同研究をさせていただいています。コモングラウンドについて詳しくは、コモングラウンドリビングラボのHP(https://www.cgll.osaka/)と、gluon tokyoが公開しているYouTube(https://youtu.be/IHPjkVuAeh4)をご参照ください。

昨今、生産管理に限らず、デジタルツイン(Digital Twin)化が加速しています。デジタルツインとは、物理空間にある現実の空間・機器・設備およびそれらの環境情報・稼働状況などを、リアルタイムに収集し解析する一方、それらを仮想空間にデジタル情報として再現し、現実に即したシミュレーションを可能にする技術です。近年ではIoTが普及し、あらゆるモノのデータをリアルタイムに収集することが可能になっていて、デジタルツインの技術も飛躍的に進化してきています。

ビジネス活動において、マーケティングやシミュレーションの実施は不可欠です。市場のニーズや規模に合った製品開発や品質管理のために、あらゆる業界でシミュレーションが実施されています。デジタルツインもシミュレーションの一種ですが、従来のシミュレーションとは違い、物理空間(現実)の変化と仮想空間とをリアルに連動させています。

機械部品の耐久性のシミュレーションを実施する場合を例に説明します。物理空間(現実)において機械部品には、使用を継続していく過程で摩耗や破損などが発生します。従来のシミュレーションの手法では、実際に発生したこのような摩耗や破損による変化のデータを、シミュレーション専用のソフトウエアに入力し、その結果をその後の製品開発や品質管理にフィードバックするという過程が必要となります。それに対してデジタルツインでは、物理空間(現実)で発生した変化とリアルに連動しているため、機械部品の摩耗や破損などを、リアルタイムに仮想空間に再現することができます。これによって、シミュレーションが迅速にできたり、リアルタイムの情報をAIによって解析し問題発生を予知したりできるようになります。

日本におけるデジタルツインの成功事例として、製品開発や生産管理や品質管理など、モノづくりの業界においてIIoT(Industrial Internet of Things)での事例は多いのですが、世界に目を向けると、シンガポールで実施されている『バーチャル・シンガポール(Virtual Singapore)』のように、都市そのものをデジタル化する試みが進行しています。仮想空間に3Dモデルを構築し、そこにあらゆるリアルタイムなビッグデータを統合することで、インフラ整備や渋滞緩和、アクセシビリティの改善などに寄与しようという試みです。近年、日本においてもスマートシティの取組みが推進されています。トヨタ自動車が進めているウーブン・シティが代表的な事例です。

2025年の『大阪・関西万博』をひかえる大阪で、デジタルツイン化が加速し、コモングラウンドの共通基盤が構築されていくことに貢献できればと、日々邁進しております。

(文: 船越亮 r.funakoshi@kankou.co.jp)

(記事は2022年1月31日現在の内容です。)